HOME » C-DEC Special feature » C-DEC NEWS » C-DEC NEWS 特別対談/ビジネス編
C-DEC NEWS 特別対談/ビジネス編

地域産業におけるデザインの新しい価値とは?
デザイン業界のトップで活躍されるお二人に、現在の業界の動向をご紹介いただき、これから求められる人材について、また、そのために学生は今何を身に付けるべきかを問いました。井上 現在、デザイン業界では、デザイナー個人の能力や仕事を評価することから、「組織としてのデザインカ」を評価する方向に変わってきています。個人のセンスや技術にのみ頼る、いわゆる「一匹狼」的な発想は、今の市場には合わなくなっています。また、デザイナーの能力そのものには、東京や大阪でも岡山でもそれほど差はないのですが、評価の基準に違いがあります。たとえば岡山では、「付き合いが長い」「誰々の紹介」といった人間関係が絡みがちだけれど、中央では「いいデザインをする」ことを優先します。そして、デザインの価値観は人口に比例します。つまり、人口が少ない場所では価値観も低く、そういう場所ではデザイン自体が育ちにくいのです。それらを踏まえると、これからの中国デザインは、学校そのものが情報をたくさん持っていなくてはならないと思います。学生が組織でやっていける人材になるかどうかは、そこにあります。
森田 今まで地方ではデザインの価値というものが意識されていませんでしたが、地方の年配の経営者もようやくデザインのことを口にし始めましたね。
井上 そういう現状の中で、実は、デザイン関係の会社では、意外と社員教育ができてないんですよ。
森田 たしかに、我が社の規模では、新入社員研修の後はOJTに頼らぎるを得ません。四半期に一度は研修を実施していますが、後の検証が弱いのが反省点ですね。
井上 私は社員教育にはどんどん投資するペきだと思います。当社では1年間のプログラムを作成して、毎月勉強会を開催。3年日には試験をして、合格した社員は会社の費用で大学に行かせています。特に重視するのは、スピーチ能力ですね。プレゼンテーションの出来ないデザイナーはいらない。
小林 そこで働くとは、会社にとって自分はどんな価値があるのかをアピールし、評価してもらうことを意識しないといけないんですね。
井上 会社側は自社の理念を明確にし、実行と一致していることを示さなくてはならない。多くの中小企業は、理念は明確に持っているが実行していない。採用しても人材が集まらないのはその点に問題があると、経営者は認識するペきです。
森田 昨年から社員にクレド(企業理念)を持たせるようにしたんですが、意識が変わってきていますね。スキルアップも大事ですが、社員の意識合わせはもっと大切だと、最近感じています。
小林 本校では、「卒業後にこの方向で働くために頑張る」という気持ちを学生に持たせるよう努めています。狭い分野でのスペシャリストではなく、専門学校に求められる「技術」を生かしつつ、ものごとに幅広く柔軟に対応できる人材を育てたい。そのために、インターンシップや社会奉仕活動などに参加させ、ある程度は成功しているのですが、ここ3年ほど学生の質が変わりましたね。適応力や持続力、学んだことを自分の価値として社会に貢献するという意識を高校時代までに身に付けている学生が少なくなっています。
森田 放っておくと勉強しない若い人は多いですね。インターネットの発達で、ありとあらゆる情報が手に入るのに、基本的な勉強の仕方を知らないんです。自身に専門家としての意識がないからテーマもない。だから質の高い情報を自分の中にインプット、アウトプットすることができないんです。このトレーニングを専門学校のカリキュラムに取り入れるとよいのではないでしょうか。
井上 学校は学生を平等に教育し、落ちこぼれる人を作らないのが使命だけれど、企業は落ちこぼれを作り、できる人間だけを残す。特にデザインのようなプロの業界で、落ちこぼれがないというのはまず無理。だからといって、それだけでもだめなんです。多くのデザイン会社では、デザイナーはプロだからと放置してしまい、企業の中での教育がない。プロのスポーツ選手だって、コーチや監督がいて常に指導しているわけでしょう。それと同じで、その教育体制がきちんとできる会社では、社員が伸びるんです。それは中央・地方に関わらず、経営者の考え方次第です。仕事のできない社員をたくさん抱えて、売り上げが伸びないと文句を言うのなら、教育に投資するべきです。モチベーションを上げるには、教育しかないんです。専門学校は誰でも入れると、高校生も保護者も思っています。そんな低い価値意識を変えるために、中国デザインにも特別コースを設ければいいんじゃないでしょうか。少子化で学生が減ると心配するより、学校は学生が来るような仕組みを作らなくてはいけない。
小林 高等学校が特進コースを設けて差別化しているように、専門学校もリーダーになる人材を育てる必要がありますね。そのためには教員の質も重要です。その部分の意識を上げることで、教員が自発的に研修に参加して、事後の報告会や現場においてフィードバックするようになってきました。常に勉強しながら進化して、学生に信用される教員が増えるはど、学校としてのモチベーションが上がる。しかし、数年前までは、我々はどうやって学生に入学してもらおうかと考えていたけれど、来るべき入口をあまり意識していなかった。今になって思えば、学校内部の意欲自体が下がっていたのかもしれませんね。
井上 大きなビジネスでは、コンセプトアイデアが何より重要視されるようになっています。次にデザインマネジメント、それからデザイン表現。コンセプトアイデアはその会社が持っている力でしか出てこない。アイデアは知識や情報から生まれるもので、感覚からではありません。専門学校生はアイデアを作るための知識が少ないですね。大学とは、その基礎教育の部分の遣いが大きいんです。専門課程に進むには、基礎知識が必要です。デザインに特化しすぎず、基礎知識の勉強指導ができれば、中国デザインの価値はもっと上がるはずです。
森田 専門学校の中でも、中国デザインは3年制だけあって、学生の技術だけでなく、問題意識の持ち方も身に付いていると思いますね。ただ、対社会となると畏縮しがちで、自己アピールに欠けるのが惜しいです。インターネットというツールのおかげで誰もが情報発信できる時代、世の中に打って出るには、普通にやっているというだけではだめなんです。「この分野のこのテーマの研究は任せろ」というものをそれぞれの学生が持つ。専門学校の名にマッチした、そんな専門家集団になると面白いんじゃないかな。そのためには、1年次から自分で何かテーマを持てば、基礎知識や寺門スキルを磨くにもアンテナが立ちやすいのではないかと思います。
小林 自分の行くべきところを見極め、最初は荒削りでも、期待に応える人材を送り出すことが我々の喜びです。そういうゴール自体はぶれていませんが、世の中や学生の質の変化に合わせて、我々自身も「去年よりどう変わるか」をクリエイティブに考え、すべきことを自覚し、同僚にも学生にも社会にもアピールしていかなくてはいけませんね。お二人の話から我々の使命を再認識しました。今後ともご指導よろしくお願いいたします。
井上 勲(いのうえ いさお)株式会社アイディーエイ代表
1976年いのうえデザイン創業。
1992年株式会社アイディーエイに社名変更。岡山・東京・大阪に事業所を持ち、デザインマネジメントコンサルディング、各種デザイン、イベント企画・運営などを手掛けている。
日本パッケージデザイン協会会員。岡山広告協会新聞広告賞、ロンドンインターナショナルアワーズ、ベルギー・ペントアワードほか受賞多数。
森田 桂治(もりた けいじ)株式会社ゴーフィールド代表
株式会社日立製作所、日本シリコングラフィックスを経て、2000年有限会社ゴーフィールド設立(2002年株式会社に改組)。香川・東京・沖縄・中国大連に事業所を持つ。ウェブデザイン、企業・大学・自治体のコンサルティング、各種システム開発、コマース・ポータルサイト制作・運営。株式会社サイエンス・テクノロジー・システムズならびに株式会社蒼天取締役。
小林 照尚(こばやし てるなお)中国デザイン専門学校校長・造形作家
養護学校、中学校の教諭を経て、1992年から中国デザイン専門学校で教鞭をとる。1999年より現職。2004年からは、島根デザイン寺門学校(姉妹校)の校長も兼務。専門は彫刻。作家としても岡山を中心に作品を積極的に発表。仙台市・神戸市・新潟市等に作品を設定。個展・グループ展参加の他、若手作家の育成・発掘や紹介、海外のシンポジウムヘの参加等と、多方面で活発に活動中である。













