子どものころからゲームが好き。ゲームとの出会いは小学校3年生のときにプレゼントに買ってもらったポケモンで、兄と一緒に遊んだ思い出がゲーム好きの原点です。
ゲームするみんなは笑顔で、自分もこんな風に人を笑顔にする仕事がしたいと思うようになりました。
そして何より絵を描くことが好き。飽きっぽい性格でほかのことは続かなかったけれど、描くことは飽きることがありませんでした。
「ゲームが好き」「人を笑顔にすることが好き」「絵を描くことが好き」この3つを実現できる仕事は「キャラクターデザイナー」でした。
「私にはこれしかない」ここからキャラクターデザイナーへの道がスタートしたのです。
キャラクターデザイナーを目指して独学でイラストを描いていた高校2年生のとき、「このまま絵を描き続けても上達しない」と大きな壁を感じました。
自分には何が足りないのだろうと悩む日々。デジタルで絵を描いていましたが、基礎が足りないのではと気づき、高校のデッサンの授業を履修しました。
ゲーム業界に進む夢を打ち明けた高校の先生に勧められて美術部にも入部。それまで表立って活動することがなかったのですが、チャンスをもらい岡山県の温泉のポスター制作の仕事にチャレンジ。何度もリテイクがあったけれど、仕事として絵を描くやりがいを知ることができました。
高校の総合学習の時間に、憧れのイラストレーター・さいとうなおきさんにメールでインタビューする機会がありました。「絵がうまくなりたいなら、気付いたことをまとめるノートを作るといいよ」とアドバイスをもらい実践。
自分の絵の弱点を分析したり、絵の練習方法を書きとめたり。思うように描けないときは、口にはできない気持ちをノートに書いて整理していました。
高校1年生までは憧れの夢だったキャラクターデザイナーが、2年生には「本気」の夢に変わっていったのです。
高校卒業後の進路は、美術大学に進むべきか専門学校に進むべきか悩みました。
進路取材で中国デザイン専門学校に訪れ、学校行事が多く、先生と生徒との交流も活発ということを知り、入学を決めました。
入学後は、デッサン、クロッキー、レタリングとデザインの基礎からみっちり勉強。美術大学の学生には負けたくないという負けん気もあり、人物だけでなく、動物など幅広い題材を練習しました。
チームで取り組む課題もあります。カードゲームのキャラクター制作では、たくさんのキャラクターをみんなで分担して制作しました。みんな若い女性のキャラを描きたがるけれど、男性キャラやキャラの年齢バランスを考えることも必要。みんなで1つの作品を作り上げるチームワークやコミュニケーションを身につけることができたと感じています。
好きなイラストやマンガのキャラクターについて語り合える友人にも出会えて、今の自分につながっています。
中国デザイン専門学校で学び始めて、子どもの頃の夢に一歩一歩近づいてきました。
「自分を変えてポジティブになりたい」
中国デザイン専門学校に入学すると、引っ込み思案だった高校時代から心機一転し、周囲の先生たちに「ゲーム業界に本気で行きたいんです」とアピール。美術大学出身の村木先生を紹介してもらい、初日の授業の後、すぐにデッサンの指導をお願いしました。
先生の「まあ、いいんじゃない」は最上級の褒め言葉。まだまだデッサンの枚数が足りないと駄目出しをされることも多いですが、本音を言い合える大切な先生です。
先生の勧めで色彩士検定1級に挑戦。中国デザイン専門学校の学生は全員3級を受験しますが、やるなら社会人になっても役立つ1級を取りたいと。苦手な色彩理論や混色問題を村木先生がサポートしてくれました。
1級の実技試験では色の効果を考えて配色をデザインし、意図を説明する力が求められます。合格後は時代背景や世界観を踏まえた配色設計を意識するようになり、配色に違和感があるときには冷静に見直すことができるようになりました。
コンペに数多く出展することも村木先生からは勧められたこと。
思うように賞を取れないときは、入賞した方の作品と自分の作品を見比べて、何が違うのかを振り返りました。その経験から、就職活動では「どんなことを会社は求めているのか」「どんなことをしたら会社は喜ぶのか」「どんな人材をほしと思っているのか」と相手を意識した作品づくりと自分の見せ方ができるように。
「やった方がいいと思うことはすべてやる」と決めて実践していきました。
たとえばデジタルだけはなく、アナログで作品を作ってみること。
ゲームジャムに参加して、実際にゲーム制作を経験すること。
キャラクターづくりの世界観を養うため実物を見ることを大切にすること。
クラスのリーダー役を率先して、コミュニケーション力を身にけること。
活動のすべてがゲーム業界に就職するという目標につながっていきました。
国際コミック・マンガスクールコンテスト2019のイラスト部門で、日本人で唯一入賞。
デッサンで磨いた躍動感のある足の表情や、色彩士検定で培った配色とリアルな影のつけ方が評価された瞬間でした。
技術はまだ足りないけれど、色んな人と話をして、色んなことにチャレンジして、そして失敗もたくさんしたこと。その経験は他のだれにも負けないと思っています。
ポートフォーリオの表紙には、兄と一緒にゲームをする後ろ姿を描き、自分の原点に思いを込めて面接に望みました。
【国際コミック・マンガスクールコンテスト2019入賞作品】
【ポートフォーリオの表紙】